工房では、梅の花が咲き始めています。
…
六条院では、明石の姫君の御裳着(おんもぎ)の
儀が近づいています。御裳着というのは女の子の
元服の儀式のようなものです。
光源氏は優雅に香の調合に夢中になっています。
そんな光源氏に朝顔の前斎院から、香が届きます。
歌も添えられております。
「花の香は散りにし枝にとまらねど
うつらむ袖に浅くしまめや」
好意を寄せ続けている朝顔に、光源氏は歌を返します。
「花の枝にいとど心を染むるかな
人の咎めん香をば包めと」
「梅枝(-源氏物語 第三十二帖-)」より